Read The Twilight Zone/ミステリーゾーンを「読む」

サーリングの書いたシナリオの内幾つかは、サーリング自身の手によってノベライズされている。本国での番組放送開始から1年以内の早い時期に最初のノベライズ、“STORIES FROM THE TWILIGHT ZONE”(邦訳:二見書房刊「オリジナル版−超次元の漂流者トワイライトゾーン」)がバンタム・ブックスから出版されている。この本が40万部以上を売るヒットとなり、その後ほぼ1年の間隔を置いて“NEW STORIES FROM THE TWILIGHT ZONE”(邦訳:山口書店刊「新ミステリーゾーン真夜中の太陽」に6篇中4篇)“MORE STORIES FROM THE TWILIGHT ZONE”の計3冊と、ダブルデイから“FROM THE TWILIGHT ZONE”、更にグロセット&ダンラップからはノベライズ2本を含むサーリングの短編小説集“ROD SERLING'S THE TWILIGHT ZONE”が相次いで出版された。
ところで、文春文庫版「ミステリーゾーン」の巻末に収録されている矢野浩三郎の「訳者あとがき」によれば、バンタム・ブックス版3冊、全19話とダブルデイ版から1話(“BACK THERE”とされる)を加えて「ミステリーゾーン」「同2」の2冊に全20話分が訳出された事になっているが、1962年に発行されたネルソン・ ダブルデイ版“FROM THE TWILIGHT ZONE”には、この“BACK THERE”は収録されておらず、1963年発行のグロセット&ダンラップ版“ROD SERLING'S THE TWILIGHT ZONE”には収録されている事から、何か勘違いされたのでは無いかと思われる。
グロセット&ダンラップ版“ROD SERLING'S THE TWILIGHT ZONE”に収録されているサーリングのノベライズは“BACK THERE”(放映題:「過ぎし日を」)ともう1本、“JUDGEMENT NIGHT”(放映題:「審判の夜」)だが後者のみが未邦訳なのが惜しまれる。いずれにせよ、文春文庫版「ミステリーゾーン」1・2巻にはサーリング自身によるノベライズの殆どが網羅されている事になる。
一方、文春文庫版「ミステリーゾーン」3・4巻には、エイヴォンから発行された“THE TWILIGHT ZONE THE ORIGINAL STORIES”に収録された全30話から18話分が訳出されている。訳出されなかった残りの12話の内、2000年8月に発行された早川書房の「ミステリマガジン」第533号に2話が掲載された事によって、全40話分のノベライズないし原作小説が読める事となった。
その後、「ミステリマガジン」第582号に"TIME ENOUGH AT LAST"が訳出されたので、未邦訳は残り9話分となった。
(2004年7月20日・追記)

グロセット&ダンラップ版アンソロジーには、実はもう一つ“ROD SERLING'S THE TWILIGHT ZONE REVISITED”と題する物があり作者はこれのTEMPO BOOKS版ペーパーバックを所有しているが、その中にこれまで見落としていたが"THE PURPLE TESTAMENT"(放映題:「死相」未邦訳)のノベライズが残っていた。またこの本からは、「ミステリマガジン」第594号に"THE MIRROR IMAGE"(放映題:「めぐりあい」)が、短編集「地球の静止する日」に"BEYOND THE RIM"(放映題:「幻の砂丘」)が、「世にも不思議な怪奇ドラマの世界」に"THE MAN IN THE BOTTLE"(放映題:「家宝の瓶」)が訳出されている。このグロセット&ダンラップ版アンソロジー2冊は、実はミステリー作家のウォルター・G・ギブスンの翻案によるものである。

(2004年7月27日・追記/28日加筆修正・2005年7月9日修正・2008年11月7日加筆修正・2017年3月28日加筆修正)

放 映 タ イ ト ル 作 者 原 題 邦 訳 題 翻 訳 所 収 出 版 社 備 考
生と死の世界 ロッド・
サーリング
THE SHELTER 核シェルター 風呂本武敏・
風呂本惇子
新ミステリーゾーン
真夜中の太陽
山口書店
砂の上の宝 THE RIP VAN WINKLE CAPER リップ・ヴァン・ウインクル強盗
弱き者の聖夜 NIGHT OF THE MEEK 柔和なる人びとの夜
狂った太陽 THE MIDNIGHT SUN 真夜中の太陽
そこには誰も
いなかった
ロッド・
サーリング
WHERE IS EVERYBODY? みんなはどこにいる 南山 宏 オリジナル版−超次元の
漂流者トワイライトゾーン
二見書房 サラブレッド・
ブックス321
過去を求めて WALKING DISTANCE 歩いて行ける距離
鉄腕ケイシー THE MIGHTY CASEY 鉄腕ケイシー
良心を売った男 ESCAPE CLAUSE 免除条項
疑惑 THE MONSTERS ARE DUE
ON MAPLE STREET
メープル通りの怪物
熱病 THE FEVER 狂熱
01 そこには誰も
いなかった
ロッド・
サーリング
WHERE IS EVERYBODY? だれもいなくなった町 小菅正夫 ミステリーゾーン 文芸春秋 文春文庫
02 過去を求めて WALKING DISTANCE 歩いて行ける距離 矢野浩三郎
03 強いぞ、
ディングル君
MR.DINGLE, THE STRONG 怪力ディングル
04 過ぎし日を BACK THERE 時のかなたに
05 熱病 THE FEVER 熱狂 山本光伸
06 疑惑 THE MONSTERS ARE DUE ON
MAPLE STREET
メープル通りの怪
07 奇蹟 THE BIG, TALL WISH 大いなる願い 矢野浩三郎
08 機械ぎらい A THING ABOUT MACHINES 機械に脅迫された男 小菅正夫
09 敗北者 A STOP AT WILLOUGHBY ウィラビーに停車 矢野浩三郎
10 狂った太陽 ロッド・
サーリング
THE MIDNIGHT SUN 真夜中の太陽 矢野浩三郎 ミステリーゾーン2 文芸春秋 文春文庫
11 良心を売った男 ESCAPE CLAUSE 免除条項 矢野浩三郎
村松 潔
12 DUST 魔法の砂
13 鉄腕ケイシー THE MIGHTY CASEY 奇跡の左腕ケイシー
14 生と死の世界 THE SHELTER 核シェルター
15 西部劇作法 SHOWDOWN WITH RANCE
McGREW
ランス・マグルーとの対決
16 砂の上の宝 THE RIP VAN WINKLE CAPER リップ・ヴァン・ウィンクルの
犯罪
17 因縁も売りものです THE WHOLE TRUTH 真実のみ
18 33号機の漂流 THE ODYSSEY OF FLIGHT 33 フライト33 時間の旅
19 星に流された男 THE LONELY 孤独な男
20 弱き者の聖夜 NIGHT OF THE MEEK 柔和な人のクリスマス
21 百万ドルの変身 ヘンリー・
スレッサー
THE SELF-IMPROVEMENT OF
SALVADORE ROSS
サルバドア・ロスの
自己改良
矢野浩三郎 ミステリーゾーン3 文芸春秋 文春文庫
22 平和の園 チャールズ・
ボーモント
ELEGY 楽園に眠る
23 物言わぬ少女 リチャード・
マシスン
MUTE 言葉のない少年
24 四角い墓場 リチャード・
マシスン
STEEL スティール
25 ジャングルの呪い チャールズ・
ボーモント
THE JUNGLE ジャングル
26 人類に供す デーモン・
ナイト
TO SERVE MAN 人間饗応法
27 おのれの影 チャールズ・
ボーモント
IN HIS IMAGE そっくりの人
28 消えた少女 リチャード・
マシスン
LITTLE GIRL LOST 消えた少女
29 魅いられた男 チャールズ・
ボーモント
THE DEVIL, YOU SAY? 悪魔が来たりて−?
30 霧に消えた船 チャールズ・
ボーモント
SONG FOR A LADY レディに捧げる歌 矢野浩三郎 ミステリーゾーン4 文藝春秋 文春文庫
31 二万フィートの戦慄 リチャード・
マシスン
NIGHTMARE AT 20,000 FEET 高度二万フィートの悪夢
32 こどもの世界 ジェローム・
ビクスビー
IT'S A GOOD LIFE 日々是好日
33 幻の宇宙船 リチャード・
マシスン
DEATH SHIP 死の宇宙船
34 悪夢 チャールズ・
ボーモント
PERCHANCE TO DREAM 夢を見るかも・・・・・・
35 誰かが何処かで
間違えた
リチャード・
マシスン
DISAPPEARING ACT 消えていく
36 嵐の夜 チャールズ・
ボーモント
THE HOWLING MAN 吠える男
37 真夜中に呼ぶ声 リチャード・
マシスン
LONG DISTANCE CALL 遠い電話
38 ロボットの歌 レイ・
ブラッドベリ
I SING THE BODY ELECTRIC 素晴らしきかな、電子の人 矢野浩三郎
山下義之
39 人間という名の動物 ポール・
フェアマン
BROTHERS BEYOND THE VOID 遠い星から来た兄弟 田中一江 ミステリマガジン533号 早川書房
40 魔書と南軍 マンリイ・
ウエイド・
ウェルマン
THE VALLEY WAS STILL 谷間は静かだった 仁賀克雄
41 廃墟 リン・A・
ヴェナブル
TIME ENOUGH AT LAST 廃墟 尾之上浩司 ミステリマガジン582号 早川書房
42 めぐりあい ロッド・
サーリング
THE MIRROR IMAGE 鏡像 尾之上浩司 ミステリマガジン594号 早川書房
43 幻の砂丘 ロッド・
サーリング
BEYOND THE RIM
(a.k.a A HUNDRED YARDS
OVER THE RIM)
幻の砂丘 尾之上浩司 地球の静止する日 角川書店 角川文庫
44 家宝の瓶 NEW! ロッド・
サーリング
THE MAN IN THE BOTTLE 家宝の瓶 尾之上浩司 世にも不思議な
怪奇ドラマの世界
洋泉社

エイヴォン版“THE TWILIGHT ZONE THE ORIGINAL STORIES”の訳出されなかった残りの9話分は以下の通りである。因みに、"ONE FOR THE ANGELS"と"THE CHANGING OF THE GUARD"をノベライズしたのはサーリングの実娘、アン・サーリング=サットンである。
"ONE FOR THE ANGELS" ANNE SERLING-SUTTON
"WHAT YOU NEED" LEWIS PADGETT
"THIRD FROM THE SUN" RICHARD MATHESON
"FOUR O'CLOCK" PRICE DAY
"THE CHANGING OF THE GUARD" ANNE SERLING-SUTTON
"BLIND ALLEY" MALCOLM JAMESON
"THE OLD MAN" HENRY SLESAR
"THE BEAUTIFUL PEOPLE" CHARLES BEAUMONT
"AN OCCURRENCE AT OWL CREEK BRIDGE" AMBROSE BIERCE
これらの邦訳は無いかと徹底的に調査してみたところ、アン・サーリング=サットンによるノベライズを除く7話分については過去の訳出が見つかった。更に、本国でのオリジナル出典は不明だが邦訳を確認した2作品と併せて、以下に一覧を掲載する。
また、山本弘さんが2016年に出された「『ミステリー・ゾーン』徹底解説」を参照し、新たに2作品を発見したので紹介しておく。(2016年8月17日追記)

放映タイトル 作者 原題 邦訳題 翻訳 所収 出版社 備考
45 彼に必要なもの ルイス・
パジェット
WHAT YOU NEED 御入用の品あります 矢野浩三郎 SFマガジン128号 早川書房 1969年12月
46 地球への脱出 リチャード・
マシスン
THIRD FROM THE SUN 第三惑星 斉藤伯好 SFマガジン40号 早川書房 1963年3月
47 悪意の果て プライス・
デイ
4 O'CLOCK 悪人 有賀秀紀 ヒッチコックマガジン9号 宝石社 1960年4月
48 再び故郷へ マルコム・
ジェームソン
BLIND ALLEY 魔王との契約 竹生淑子 魔女・魔道士・魔狼 朝日ソノラマ ソノラマ文庫
海外シリーズ
49 洞窟の予言者 ヘンリー・
スレッサー
THE OLD MAN 南山 宏 ミニミニSF傑作展 講談社 単行本
50 ある改造 チャールズ・
ボーモント
THE BEAUTIFUL WOMAN
(a.k.a. The Beautiful People)
変身処置 深町眞理子 SFマガジン47号 早川書房 1963年9月
51 『ふくろうの河』
(未放映)
アンブローズ・
ビアス
AN OCCURRENCE AT
OWLCREEK BRIDGE
アウル・クリーク鉄橋の
出来事 等
死の診断
−ビアス怪奇短篇集− 他
各社 複数あり
52 媚薬 ジョン・
コリア
THE CHASER また買いにくる客 中西秀男 ジョン・コリア奇談集 サンリオ サンリオSF文庫69-A
53 顔を盗む男 ジョージ・
クレイトン・
ジョンスン
ALL OF US ARE DYING だれもが死んでいく 浅倉久志 SFアドベンチャー21号 徳間書店 1981年8月
54 No.22の暗示 NEW! E.F.ベンソン原作
ベネット・サーフ翻案
THE BUS-CONDUCTOR 馭者 大原寿人 5分間サスペンス 日本文芸社 1965年7月
55 夢の世界 NEW! チャールズ・
ボーモント
TR?UMEREI トロイメライ 村上博基 予期せぬ結末2 トロイメライ 扶桑社 扶桑社ミステリー

今回、TZの原作小説を調べていて番組用に書き下ろした脚本、すなわち原作の存在しない完全オリジナル作品もさる事ながら、原作ないし原案の存在する作品が意外に多い事に改めて驚かされた。原案、つまりアイデアやプロットの提供のみで「作品が存在しない」物も多く含まれてはいるが、全156エピソードの3分の1近くは原典ないし原作、或いはノベライズが存在する事になる。しかし、その邦訳となると’60年代以降に出版されたSFや怪奇・幻想系のアンソロジーや個々の作家の短編集に運良く収録されていたとしても、根強いファンやマニアを持つジャンルだけに入手はなかなか難しい様だ。


最後に、作者の書架から7冊を紹介する。

放映タイトル 作者 原題 邦訳題 翻訳 所収 出版社 備考
子どもの世界 ジェローム・
ビクスビー
IT'S A GOOD LIFE きょうも上天気 浅倉久志 ファンタジーへの誘い 講談社 講談社文庫
『ふくろうの河』
(未放映)
アンブローズ・
ビアス
AN OCCURRENCE AT
OWLCREEK BRIDGE
アウル・クリーク橋の
一事件
中西秀男 ビアス怪談集 講談社 講談社文庫
誰かが何処かで
間違えた
リチャード・
マシスン
DISAPPEARING ACT 蒸発 小鷹信光 激突! 早川書房 ハヤカワ文庫
狂った太陽 ロッド・
サーリング
THE MIDNIGHT SUN 真夜中の太陽 福島正実 奇想天外創刊号 盛光社 1974年1月創刊号
良心を売った男 ロッド・
サーリング
ESCAPE CLAUSE 不死の条件 久保田洋子 奇想天外4号 盛光社 1974年4月号
『ふくろうの河』
(未放映)
アンブローズ・
ビアス
AN OCCURRENCE AT
OWLCREEK BRIDGE
絞首刑の男 荒俣宏
武内孝夫
世界の恐怖怪談 学研 ユアコースシリーズ
二万フィートの戦慄 リチャード・
マシスン
NIGHTMARE AT 20,000 FEET 高度六〇〇〇メートルの悪夢
『ふくろうの河』
(未放映)
アンブローズ・
ビアス
AN OCCURRENCE AT
OWLCREEK BRIDGE
アウル・クリーク鉄橋での
出来事
大澤栄一郎 吊された男 角川書店 角川ホラー文庫
ロッド・
サーリング
DUST 魔法の砂 矢野浩三郎
村松 潔

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