「ミステリーゾーン」の日本での第2シーズンは、米国版第2シーズン全29話に第3シーズンから9話を加えて合計38話の放送が計画されていた。昭和36年10月4日に始まったこの日本版第2シーズンは、翌昭和37年4月25日までに米国版第2シーズンから23話、第3シーズンから7話の合計30話で一応のレギュラー放送を終え、米国版第2シーズンの残り6話分と米国版第3シーズンの全37話の日本に於ける放送開始当初の数本は複雑な放送形態の中で放送された。
すなわち、昭和37年5月からは『プロ野球水曜ナイター』の試合雨天中止時に差し替えで放送する、いわゆる「雨傘番組」として米国版第2シーズンから2話と同第3シーズンから1話が放送された。
続いて、10月のいわゆる「(秋の)番組改変期」の他番組の「穴埋め」放送として、以下の2話を放送している。
昭和37年10月13日、「無用な男」の放送をもってTBSのこの年の「ミステリーゾーン」の放送は完全に終了していたのだ。これは「番組改変期」にTBSが「ミステリーゾーン」の放送継続を翌年の「改変期」まで行わない決断をした、とも推測出来る。事実、この昭和38年には前年度に引き続き、5月から10月にかけて『プロ野球水曜ナイター』の「雨傘番組」として4本の「ミステリーゾーン」の放送が計画されていた。しかし実質的には3本だけが放送されたに留まっている。その3本とは、
であり、これらに加えて、昭和38年10月2日に「こどもの世界」ep.73 IT'S A
GOOD LIFEの放送が予定されていたが、当日の野球中継が雨天中止とならず未放映のままとなっていた。
この4本には非常に特徴的なタイトルが付けられている。「〜の世界」で統一されているのだ。これは前年の「雨傘」「穴埋め」放送とは一線を画する物で、この上記4本に関しては従来のシリーズの流れでは番組タイトルが『ミステリーゾーン』となるところを、『ミステリー』と改題して放送する計画だった事に何か関係があると思われる。
パイオニアLDCが発売したLD-BOXセットの資料上で一部、番組タイトルが「ミステリーの世界」と表記されているのは明らかに誤りなのだが、これは止むを得ない。何故なら(正しくは)「ミステリー」のオープニング・ナレーションの中で「・・・あなたはこれから
ミステリーの世界へ入ろうとしているのです」と語らせている事に起因するミスだと考えられるからである。
「こどもの世界」の、貴重な当時の録音台本を見ると興味深い「真実」が見えてくる。このエピソードの日本語吹替版の録音は昭和38年9月28日であり、当初放送予定だった10月2日の僅か5日前である。また、表紙にはハッキリと「ミステリー」と題され、提供会社の名前もプロ野球中継番組の「ハウス食品」となっている。間違いなく『ミステリー』の中の1話として放送される予定で、録音も終了していたのだ。しかし、現存する日本語版のオープニング・ナレーションに耳を傾けると「・・・あなたは今
ミステリーゾーンに入ろうとしているのです」となっている。これは昭和38年10月5日に始まる「ミステリーゾーン」の日本に於ける第3シーズンの第2話として同年10月12日に放送されるまでの、放送が中止となった翌日の10月3日から実際に放送された前日の11日までの9日間の間に、『ミステリー』用のオープニング・ナレーションを『ミステリーゾーン』用に録音し直した事を推測させる。
結果、「こどもの世界」は『ミステリーゾーン』として放送されたのだ。
日本に於ける第2シーズンまでは、東京放送(TBS)映画部が独自で日本語版を制作していたが、米国版第3シーズン分を境に、専門の制作会社に日本語版制作を発注(外注)している。選ばれた会社は関谷産業・千代田プロダクションである。この外注分からホストのロッド・サーリング役の声優は、それまでの久米明から明石一に交代しているのだが、この事は上記昭和37〜38年の「混乱期」であっても例外ではなく、
の2本は「サーリング=明石一」となっている。つまり『ミステリー』題で放送された「生と死の世界」であっても、米国版の第3シーズン用のエピソードであれば「明石一」版、関谷産業・千代田プロダクション制作の物であると判る。
その後、米国版第4シーズンの日本語版制作は千代田プロダクション単独となり、サーリング役も明石一から千葉耕市へと交代した。更に米国版第5シーズンの日本語版制作は東洋商事株式会社へと変更になったが、サーリング役は第4シーズン分に引き続き千葉耕市が演じている。
過去の資料によれば「新聞のテレビ番組欄に掲載し易い様にタイトルを短く」した為に『ミステリー』は生まれた、と言うのが、通説であった。しかし、仮に元の『ミステリーゾーン』(8文字)であっても、『プロ野球水曜ナイター』(10文字)よりは短く、確かに『ミステリー』(5文字)なら掲載スペースは半分で済む事にはなるが、『ミステリーゾーン』の省略で単に『ミステリー』だけでも良かったのではないか?「『ミステリー』だけでは、全く別の番組だと視聴者に誤解を招く」と言うのであれば最初から『ミステリーゾーン』と正しく掲載するべきであり、それを『ミステリー』としオープニング・ナレーションまで変えたのなら、これはもう「別番組」として制作する意図があったとしか思えない。また、同じ「雨傘番組」でありながら何故、昭和38年の放送に限って『ミステリー』題へと変更されたのか?更に『ミステリー』の各話は何故、「〜の世界」に副題が統一されていたのか?
・・・『ミステリー』には、まだまだ知られていない「真実」がある様な気がしてならない。当時の、埋もれた資料が新たに発掘されるのを待つ以外、その事実を明らかにする方法は無いのだろうか。「研究者」の苦労と苦悩は今後も続く。