「MOVIE WORLD」用DVDシリーズ解説稿

2001年4月、TDKデザイン株式会社運営のビデオショップ・サイト「MOVIE WORLD」のDVDシリーズ解説文として依頼を受けて執筆した一文。テレビシリーズの概説とロッド・サーリング略歴、劇場版にも触れた内容だが作者自身の目から見ても、いっぱいいっぱいな感じが伺える(苦笑)。サイトは今では完全に閉鎖されてしまい、この文章を読む事はキャッシュを除いて不可能な為、当サイトにテキストのみ転載する事にした。もう16年前の駄文だが、作者の記念碑ではある。

誕 生 

今から40年以上も前の1959年、画期的なテレビ番組が誕生した。毎週1回1話完結のSFアンソロジー「ミステリーゾーン」(原題:THE TWILIGHT ZONE「トワイライトゾーン」)である。米本国では足掛け6年全156話が放送され、我が国では放送開始の翌年から先ずNTV系で「未知の世界」として、その後TBS系で「ミステリーゾーン」と題されて全152話が放送された。この傑作シリーズの成功がなければ、後の「スタートレック(「宇宙大作戦」)」も、もっと後の「Xファイル」も誕生しなかった。「偉大な先駆者」と言って決して過言ではない。

ロッド・サーリング

この「ミステリーゾーン」の成功は、1人の突出した才能の持主によって生み出されたものである。ロッド・サーリング。番組の冒頭で姿を現し、これから展開する物語について一言語る眉の太いハンサム・ガイが彼である。サーリングは、このシリーズで企画・制作・脚本・ナレーション・ホストの5役をこなし、TV界のアカデミー賞と言われるエミー賞をこの番組で2年連続受賞(「ミステリーゾーン」以外の作品で4度受賞、合計6度の栄冠に輝いている)し、またSF界のヒューゴー賞も同じく3年連続受賞している。サーリングは当時のテレビ業界で「天才・奇才」の名を欲しいままにした、最も成功したライターの1人に数えられている。映画「猿の惑星」の脚色でも知られるサーリングだが、やはり本領を発揮したのはこの「ミステリーゾーン」の脚本・脚色だろう。全156話中、彼が担当したエピソードは92話にも及び、どれも傑作揃いなのだから恐れ入るより他ない。

傑作SFアンソロジー

悪魔と取り引きをして不死身の身体を得た男が「死なない」事実を楽しみ自殺未遂を繰り返した後、死刑になる事を期待して妻を殺すが、優秀な弁護士の努力で終身刑になってしまう『良心を売った男』、ロボットの召し使い達に何でもさせる両親に嫌気がさした娘がロボット達を解体しなければ家を出て行く、と宣言するが彼女自身、自分には過去の記憶がない事に気付く『合成人間の家』、山中にUFOが着陸し、駆け付けた警官が跡をつけてみるとどうやら近くのレストランへと何かが入ったらしい。そこにはバスの乗客7人がいるが、実はバスに乗っていたのは6人だったという『火星人は誰だ?』、元ナチの男が戦後訪れたのは、かつての捕虜収容所があった場所で、そこで自分が惨殺したはずの捕虜達に出会い、今度は自分が裁かれる側になる『亡霊裁判』、とある村の人々は、願う事は何でも現実の物としてしまう超能力を持った子供の機嫌を損なわない様に、戦々恐々として暮らしていた『こどもの世界』、三流の脚本家が魔法を使ってシェークスピアを呼び出し自分の代りに脚本を書かせて大ヒットを連発するが、シェークスピアは撮影所で俳優と揉めてしまう『魔法入門』等など・・・ざっと見 渡しても、そのテーマは悪魔・ロボット・宇宙人・亡霊・超能力・魔法と実にバラエティに富み、そこには喜劇的・悲劇的な要素も多分に含んでいる。

しかし、ただそれだけの事ならサーリングは「何でもこなす器用な作家」と認識されるだけだったろうし、「ミステリーゾーン」という番組自体もそれなりの評価だったに違いない。40年以上もの間、人々を魅了し支持され続けているのは単にノスタルジックな理由だけではない。そこに描かれるストーリーの裏に流れる、人種差別や偏見、戦争の悲劇といった重く社会的なテーマと優れた寓話性が、その人気を支える秘密だと言える。もちろん、「ミステリーゾーン」はそんな理屈を抜きにしても十二分に楽しめる第一級のエンタティンメントであり、傑作SFアンソロジーである。不条理・タイムトラベル・侵略・パラレルワールドなどのSFのジャンルはほとんど網羅しているばかりか、逆に言えばこの「ミステリーゾーン」を見れば、「これぞ、SF!」という、本格的なSFファンはもちろんの事、誰もが唸りたくなるようなエピソードにいくつも出会う事ができる。

ある街外れに隕石が落ち、街では停電をはじめ電気系のトラブルが頻発する。そんな中で人々は誰かが宇宙人ではないかと疑心暗鬼になる『疑惑』、太陽の軌道が変わり、地球に接近してきた為に地上の温度が上昇し続ける地獄のような状況を刻々と描く『狂った太陽』、四方を高い壁に囲まれた奈落の底にいる、大佐・バレリーナ・道化師・バグパイプ奏者の4人。彼らは何故そこにいるのか何故その4人なのか全く分からないが、とにかく脱出を試みる『奇妙な奈落』などは、そのオチを知った後に見てもゾッとする恐ろしさと内容の深さがある。

劇 場 版

1983年にはスティーヴン・スピルバーグ、ジョン・ランディス、ジョージ・ミラー、ジョー・ダンテの4人の監督による競作が楽しめる劇場版も製作された。全4話の各エピソードがテレビ版オリジナルのどの作品のリメイクか見比べるのも、一興だろう。 米本国では、今でも再放送が繰り返され、6時間や8時間連続で傑作エピソードを連続放映する「トワ・ソン(トワイライトゾーン・マラソン)」も好評を博している。我が国では衛星放送系での再放送が待たれるが、それまではこのDVDシリーズでこの歴史上に名を残す傑作を存分に堪能したい。

by “twilightzone” 「The TWILIGHT ZONE研究者の家」